《MUMEI》

「そんなものに現を抜かしているから、貴方はおかしくなってしまった。
元凶さえ消え去れば、貴方は元に戻れるでしょう。」

妻の声は、硝子よりよく刺さる。

おかしい、とはどの線からだろうか。
確証のないものは、信じられない、フイリプには不明確なものを、口にしたくなかった。

フイリプの理想を語る物体が、手の平の中に、居たように。

手の平の中の塊を、汚らしいものを、触るようにして、尾から摘む。

妻は、フイリプを、口から泡を噴き、飛沫を飛ばす物体と同等の瞳で、汚らわしいものを見るのだった。

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