《MUMEI》

僕も床に荷物を置くと、砂だらけのコートを脱いでそのままシャワーを浴びてしまおうと服を脱いでいくと、ウルフウッドがチラリとこちらに視線を向けてきた。

「やだ、見ないで♪」
「んあ”!見るかヴォケ!」


久しぶりのシャワーを浴びると、僕の乾いた肌や髪にまるで植物のように水が行き渡っていくようだった。

「頭の中まで砂だらけだ」

焼けた砂は清潔だから思ったほどは汚れないのだけど、指を入れると耳の中までジャリジャリという音がした。


「ちょっと鉄のニオイがするシャワーだったよ」
「あぁ、せやろうな…こっちも苦ぇわ」

シャワーから上がってベッドルームに行くと、ウルフウッドが部屋に用意してあった水を飲みながら苦そうに舌を出していた。

「おんどれも飲めや」
「ありがとう」

そう言ってウルフウッドが用意してくれた水を飲むと、確かに苦々しい味がする。

「これは多分ミネラルが多い水だよ、という事はこの水は山から採ってきたものだろうからもうすぐ砂漠を抜けるね」
「そうなん?錆味やあらへんけど」
「シャワーの配管は錆びてるんじゃないかな、この水で顔だけ洗ってくるよ」


さっぱりして部屋に戻ってくると、ウルフウッドはジャケットのポケットを裏返して中に入っていた砂を出していた。

「はい、キミのバスタオル」
「おう、おおきに」

僕の投げたバスタオルを受け取ると、彼も服を脱いでさっさとバスルームに向かった。

「…にしても、おんどれ見るな言うといて、さっきから見せまくりやないか」

そう言われてみれば風呂上がりにバスタオルを腰に巻いただけの格好でさっきからウロウロしていた。

「ウルフウッドになら見られてもいいよ」
「アホ、何言っとんじゃ…ボケ」

この身体に刻まれた無数の傷跡、今となっては全てが良い思い出だった…。

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