《MUMEI》
出逢い
その日は高校の入学式だった。兄弟で同じ学校に通う事に疑問すら感じる事なく校舎へと続く坂道を歩いていた。
この学校には樹齢何十年という、桜の巨木が何十とある。
数日前から春の日差しを受けて蕾を開かせ春風に花弁を踊らせていた。
青空と桜色のコントラストはいまでも瞼に焼き付いている。
空から視線を落とすと目の前には誰かの後ろ姿が広がった。
まだ新しい制服姿の綺麗な姿勢の良い後ろ姿だった。ふわりと風が吹き彼が髪や制服に舞い降りた花弁をふり落とす姿。輝く容姿に目を奪われていた。
運命の出逢いなんて信じていなかった。
でもそれが運命だったんだ。

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