《MUMEI》
回帰転牙
「ひゃっはっは!そんなに死に急ぎたいってんなら即刻殺してやるぜ!!」
式夜に向かって大斧を振り回す。
小刀で受け流しながら、必死に回避する式夜を援護するようにリースがハルバーに攻撃を仕掛けるが、完全に無視されている。
ガギィィン・・
大斧と小刀が正面からぶつかり、
バキ・・
小刀が砕け、そのまま式夜の体に大斧が襲い掛かり深々と切り裂く。
「まず、これで一人!!」
ズダン!!
再び振るわれた大斧が容赦なく式夜の体を再び切り裂く。
ドサ・・
「んじゃ次はお前だ!」
ゴウ!
振るわれた大斧をなんとか避け、距離を取る。
「式夜!!!」
声を上げるが式夜はピクリとも動かない。
「死んだよ!ひゃっはっは!!」
倒れている式夜を蹴り飛ばし、声高に笑うハルバー。
「貴様・・・!」
リースが残った力を振り絞るように突撃、槍を振るう。
「この程度かよ!!相変わらずダメダメじゃねえか!!」
受け流されカウンター気味に拳を叩き込まれる。
「が・・」
「じゃあな、さよならだ!!」
立つことすら限界のリースに大斧が叩き付けられる。
バリィィン・・
窓を突き破り吹っ飛ばされていく。
「槍で防ぐってのは・・意味がねえよなぁ。ココから地面まで30メートル弱、助かるわけねぇっての!!」
落ちていったリースの姿を確認するために窓際へと寄っていくハルバー。
「真っ赤な花ってか。ひゃっはっは!!」
「・・光、乱れて・・」
ゆらりと立ち上がる式夜。全身から染み出すように夜色の燐光が溢れ・・それを抑えるように周囲に薄い紫色の鎖が表れる。
「あ?」
立ち上がった式夜を訝しげに睨むハルバー。
「・・天が堕ち、」
式夜の体を覆うように夜色の燐光が舞う。紫色の鎖が歪み・・
「・・・お前誰だ?」
ハルバーが大斧を構える。
「・・・黄昏に彷徨う。」
夜色の燐光がゆっくりと具現化されていく。それに集うかの様に夕凪の欠片が集まっていく。
「・・血が求め、心が拒む。」
燐光が弾け、式夜の両腕に残るのは一振りの刀。砕けた鎖を押しのけるように式夜の体から放たれるのは今までとは違うタイプの魔力。
「無銘・・」
雷光が爆ぜ、間合いがゼロとなる。式夜の持つ刀が昏い橙色に染まりハルバーへと振り下ろされる。
「夕月。」
ギィィン!!
振り下ろされた一撃を受け止めるハルバーの肩口は深々と斬られ血が噴き出す。
「やってくれんじゃねぇか!!」
力任せに式夜を吹き飛ばそうと大斧に力を籠めるが、
「無銘。」 「うん。」
式夜の声に応じるもう一つの声。
式夜の足元で雷光が爆ぜる。合わせるように刀が昏い輝きを増す。
「な!!」
ハルバーの体が後方へと、窓の外へと吹き飛ばされる。それを追うように窓から飛び降り、空中で再び雷光が煌く。
一瞬で追いつき鋭い斬撃が放たれる。
ギィィン!!
大斧で防ぎ、式夜の体を強引に掴むハルバー。
「てめえが落ちろや!!」
「後をお願い、無銘。」
小さく式夜が呟く声は疲れきったように響く。
ガン!!
式夜を蹴り、強引に上へと飛ぶハルバー。
地面へと一直線に落ちていく式夜からは魔力が感じられず、防御用の結界を纏っているようにも見えない。
そのまま落ちれば・・即死。

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