《MUMEI》

「あぁ………!!」



観客席から落胆の声が聞こえた。


先にボールに触れたのは日高。


だがキャッチはできず、


ボールは弾かれる。



ザワッ…!!



「えっ……」



前線へと飛び出していた…



    ダムッ…



上野の頭上を越え…



    パスッ…



ゴールの中へと。



「な………」



ドドドドドワーワーッ!!!!!!!!!



「ナイッシューッ!!!!!!!!!」



この日1番の大歓声だった。



「何だあれッ!?狙ったのか!?」



「知るかッ!!入れば何でもいいッ!!」
















………………………………



    赤高ベンチ



「やったぁぁぁッ!!!!!」



ベンチでは千秋と佑香が大声で喜びを表していた。



ニヤッ…
「やっ…てくれやがった…」



クロは一言そう呟く。



「ね…狙ってやったんだろうか?」



安本は思わずクロに尋ねる。



「でしょ〜ね…


じゃなきゃボールはあんな風な動きは見せないですよ。


上野の頭を越えてゴールに入るように、


右手で少しだけボールに力を加えたんでしょ。」



「そんなことが…」



「可能でしょうね。


上野が出て来るであろうことを予想して、


初めからあれを狙ってたのであれば。


問題はできるかどうかじゃなかった。


それを試す勇気があるかどうか。


普通はおっかなくてできませんよ。」



「そりゃ…そうだ…」



「これで終演です。」



「え…?」



「試合を終えたくないと必死に食らいついて来た秀皇ですけど、


これ以上ウチに逆らえる武器はもうありません。」



「何でそんなことが…?」



「要兄弟・上野に打つ手がない以上、あとは日高と関谷が試合を決めてくれます。」

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