《MUMEI》
洋平の提案
一週間後の夏休みを控えたある日。

それは洋平の一言から始まった。


「お前さ、次の水曜日って何か予定ある?」


教室の窓際に背もたれて立っていた洋平が、ある提案を持ち掛けてきた。


「いや、特には。」


隣にいた司もまた、同じ様に窓際に背もたれながら、質問に答える。


「予定ないんだったらさ、ちょっと面白い提案あるんだけど…」

「何だよ?」

「あいつら誘ってさ…」


洋平が顎でしゃくった場所には女子の塊。
といっても三人だが、その中に優香もいた。


「はぁ?マジで言ってんの!?俺嫌だぜ?」


司は洋平の計画を頑なに拒否しようとする。


「お前知ってんだろ!俺があいつに振られた事!」

「まだ好きなくせに。」


一ヶ月前、司は優香に告白していた。が、結果は惨敗。
それ以来何だか気まずくて、同じクラスにも関わらず、会話と呼べる会話はしていない。しかし優香に対する気持ちはふっ切れておらず、洋平の言う通りまだ好きだったのだ。


「だからさ、今一度お前にチャンス作ってやろうって思うわけよ!」

「だからってなんで…」

「何?もしかしてビビり君?」

「ち、違ぇよ!!」

「あっそ。じゃあ決定な!」

「あ、おい!ちょ…っ。」

司の止める声を無視して、洋平はその女子達に声を掛けに行った。

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