《MUMEI》

だからもし、アイツまで離れてしまったら…悲しかった。

けれど翌日、ケガをしたアイツを見て、その悲しみがふっ飛ぶほどに驚いた。

「おっおまっ…どうしたんだ? そのケガっ!」

「…別に」

ふいっとそっぽを向いて、アイツは何も言わなかった。

―後から知ったことだが、アイツはあの後、わたしをイジメていた男の子達とケンカしたらしい。

しかも三対一での圧勝だったという…。

「けっケガをしてたなら、寝てた方が良いんじゃないか?」

「…ちょっと聞きたいことがあってさ」

「ん? 何だ?」

オロオロするわたしとは反対に、アイツは相変わらずの無表情だった。

「キミはボクが笑えば、嬉しいの?」

「えっ? あっああ、嬉しいが…」

「じゃあ…」

アイツはわたしの両肩を掴み、顔を近付けてきた。

そして…唇に唇を付けられた。

 ちゅっ

「………えっ?」

驚いて眼を丸くするわたしとはこれまた反対に、アイツは始めて微笑んで見せた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫