《MUMEI》
誰?
「マジで?よかったよ気に入ってくれて」

『ちょうど欲しかったんだよ〜っ、俺ストラップすぐ失くすからさ〜』



…うん、それ分かっててそれにしたんだよ。裕斗の携帯のストラップはいっつも紐だけになってて飾りが失くなっているから。



扱いが雑なんだよな、何にしても…。



ネットショプで流行ってそうな奴片っ端しからチョイスして買ってあげた訳なんだけど…。
下手にブランドのやつより見た目に派手な安い物をたくさんあげた方が本人にとって1番だと思ったんだ。


『いっぱいだから失くし放題だよ!大切にするな?ありがとう惇』


「…意味わかんねーし、普通大切にしたら失くさねーし」



『ふふっ、惇ちゃんすぐに揚げ足取るんだからぁッ!あ、あと秀幸にうまいこと言ってくれてありがとうな!おかげで欲しかったやつ買って貰えたよ』



「…俺は罪悪感で胸が張り裂けそうだよ…はあ、やっぱり買ったのか伊藤さん…こんな物を大切にしないがさつな奴に高価な物を…」




裕斗に事前に仕込まれてたんだよ。伊藤さんが俺に必ず裕斗が欲しがってそうな物聞いてくるから、聞いてきたらこれを言ってくれって…。
そしたら伊藤さん本当に聞いてきたし、スッゴい幸せそうに俺に感謝して…。


来月にあるうちの事務所主催のパーティーの時にどうしても身につけたいが為に伊藤さんに誕生日にかこつけて買わせたんだ…。



「…おまえ今に罰当たるかんな、あんな純粋な人手玉に取りやがって…」



『人聞き悪いなあ!俺と秀ちゃんはラブラブだからなんでもありなんですっ』

―――まったく…。


呆れながら携帯を閉じると、何やら隣の楽屋から伊藤さんの声がした。


伊藤さんお昼(ご飯)からいつの間にか戻ってたんだ。


いつもならみんなと一緒に弁当食べてるのに抜け出してたんだ。



――余計なお世話かもしんねーけどさ、やっぱり伊藤さんが何かと不敏だ。
いや、裕斗だって…

わがまま過ぎて愛想尽かされてからじゃ遅いんだからなっ!


ちょっと伊藤さんと話てこよう…


あ、佐伯さんとの事も一応耳に入れて貰おう。



俺は楽屋を出て、伊藤さんの声のした隣の楽屋に行った。





「……、…、あ…」
人一人入れる位開きっぱなしの扉…

その奥には伊藤さん……

と…


女の人がっ!


「…だから…裕斗の馬鹿」


――女の人と抱き合う伊藤さんが…そこにいた。

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