《MUMEI》
数字
「……なあ、サトシ」
ユウゴは控え目に口を開いた。
サトシはゆっくり顔を上げる。
泣いているかと思ったが、辛そうな表情をしているだけで涙は出ていない。
「なんでわかったんだ?それが爆弾だって」
 特に慰めるわけでもなく疑問を投げかけたのが気に入らなかったのだろう。
ユキナが睨んできた。
しかし、あいにくユウゴに気の利いた言葉は浮かんでこない。
下手なことを言うよりは何も言わない方がいいだろう。

 ユキナを無視して、ユウゴは答を求めた。
「もちろん僕も最初は知らなかった。奴らはこれは発信機だって言ってたけど、まさか信じられないだろ?だから、押さなかっただけ。爆弾だって知ったのは、ホール内で何人も爆発してからだよ」
「なるほど」
ユウゴは頷く。
「それから目的地のデパートまで走れって奴らの言葉と同時にみんなが走り出した。大パニックだったけど、それに紛れて逃げたんだ」
「……そうか」
ユウゴはポンポンとサトシの頭を叩いてやった。

「しかしなんで、警備隊はそんなことしたんだろうな?」
「そんなこと知らないわよ。それより、これ、取れないの?」
ユキナは足枷を指した。
「取れないんだ。なんか、スイッチの横から数字のボタンが一周してるんだけど」
言われて見てみると、確かに足枷には一から九までの数字のボタンがぐるりとついている。

「解除ボタンかな?」
「そうだとしても、何通りあるんだよ?組み合わせ」
サトシはすがるように、二人を見つめている。

不安なのだろう。

スイッチを入れていないとはいえ、いつ、どんなきっかけで起動、あるいは爆発するかわからないのだから。

「……ここ、番号が書かれてる」
ユキナはふと気付いたように、足枷の上部を指差した。
そこには三桁の数字が小さく刻まれていた。

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