《MUMEI》 「……拓也…」 「何も言うなよ、今は」 「………うん…っ」 きっと私より健太のが傷ついていて。 きっと私は何度も後悔するよ。 …最後に…ちゃんと健太の顔を見るべきだった。 そんな勇気…私にはなかったんだ…。 健太のが辛いのに…。 あんなに優しく見つめてくれて…。 やっぱり…健太より私のが…馬鹿だね。 馬鹿で、 どうしようもなくて、 めんどくさい。 素直じゃなくて、 可愛くなくて。 こんな私を、健太はいつも笑顔で抱きしめてくれた。 目が合った瞬間にキスして、 二人で照れ笑いして。 健太といれば、自然と笑顔がこぼれたんだ。 …ほんとに…あんな距離があいてしまったのは…いつからなんだろう。 あの子と健太が仲よさげに話してるのを見かけてから…かな。 涙はしばらく止まらなかった。 その間ずっと、拓也は抱きしめてくれていた。 前へ |次へ |
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