《MUMEI》

「……拓也…」

「何も言うなよ、今は」

「………うん…っ」



きっと私より健太のが傷ついていて。

きっと私は何度も後悔するよ。


…最後に…ちゃんと健太の顔を見るべきだった。

そんな勇気…私にはなかったんだ…。

健太のが辛いのに…。

あんなに優しく見つめてくれて…。



やっぱり…健太より私のが…馬鹿だね。

馬鹿で、
どうしようもなくて、
めんどくさい。

素直じゃなくて、
可愛くなくて。

こんな私を、健太はいつも笑顔で抱きしめてくれた。


目が合った瞬間にキスして、
二人で照れ笑いして。


健太といれば、自然と笑顔がこぼれたんだ。


…ほんとに…あんな距離があいてしまったのは…いつからなんだろう。

あの子と健太が仲よさげに話してるのを見かけてから…かな。



涙はしばらく止まらなかった。

その間ずっと、拓也は抱きしめてくれていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫