《MUMEI》

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「9年振りに再会していきなり家に押しかけてきたと思ったら、バケモノ退治の誘いだって?お前が正気かどうかまず疑うのが道理だろ。そもそもそんなトンデモ話に俺が、ハイ喜んで!とか飛びつくと思ってんのか」

辛辣に返したが榊原は想定していたのかあっさり頷いた。

「それじゃあ言い方を変えよう。君の力で世の中を救ってみない?」

「バケモノを退治して世の中を救済するっていう理論がますます理解できないな」

バッサリ切り捨てたがしかし榊原もここで引くつもりは一切ないようだ。余裕の笑みで、わからないかな?と囁く。

「僕が言いたいのはつまりね、この世にはびこる霊的なバケモノ達を殲滅させるってことだよ」

そこで一息区切ってお茶を飲む。湯呑みが離れた唇が三日月の形に歪んだ。

「ヤツ等は日々、僕達人間の生活を脅かしている。理不尽に命を奪ったり、とり憑いて発狂させたり手段は様々でしかも神出鬼没ときた。おかげで僕達は予期せぬヤツ等の奇行にいつも怯えていなくちゃならない。考えてみたらおかしな話だと思わないか?人間が人間のために造り上げた世界でどうしてヤツ等が我が物顔でのさばっているのか、僕には納得いかないんだよね」

「お前の持論なんか知るか。もう一度言うけど、俺は今の生活で困ってなんかない」

榊原の話には確かに一理ある。けれど賛同するにはあまりにも癪なので口先だけの反駁をしたが、榊原は俺の内心を見透かしたようにニヤリと不敵に笑い、『今は』ね、と意味ありげに呟く。

「ヤツ等の恐ろしさを知らないからそんな呑気なことが言ってられるんだよ…そこにいるアレも今でこそ悪さをしてないようだけど、今後どうなるかなんて誰にもわからない。その前に確実に先手を打つことを考えるのは至って普通の考えだと思うけど、違う?」

未だドア付近にいるレイコを揶揄して言った。反論を許さないやたら畳み掛ける言い方だ。俺は肯定も否定もせず、答えた。

「…俺はヤツ等とは関わらないって昔から決めてる。それが一番穏当な対処だってことも経験でわかってるからな」

関わると面倒なことになる。それは実際に経験して嫌というほど思い知っているから。だったらいっそ関わらなければ全てが上手くいく。



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