《MUMEI》

いきなり手を握られて、不覚にもドキッとしてしまった。


「手!手!何で手繋ぐのよ!」

「だってデートじゃん!」

「付き合ってないし!」


…めちゃくちゃ睨まれてるんですけど。

これ以上何か言ったら…また何か言われそう。

まあ…いっか。

周りの人は私たちがどういう関係かなんて知らないわけだし。

でもこんな感じじゃあ…カップルだと思われるんだろうなあ。

別に…嫌ではないけどさ…複雑っちゃあ、複雑。


バスで駅まで出て、電車を乗り継いでやっと着いた時にはもうお昼。

待ち合わせ時間も時間だったからな…。

こんな時間かかるのに…待ち合わせ10時って。


フリーパスは拓也がお金を出してくれた。

全力で断ったんだけど"俺が誘ったから"って。

ちょっとカッコイイな、なんて思っちゃった。

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