《MUMEI》

「…愛香、"あーん"やって」


…まさかが的中した。


「ふざけないでね、拓也くん♪」

「断るの?愛香ちゃん♪」


こいつ…。

出た、出た、出た。

この怪しげな笑み。

へー。やってくれなきゃ"襲う"ですか。

拓也以外の男なら冗談の確率高いけど、こいつの場合は…多分本気。

私が"嫌"と言った瞬間に襲ってきそう。

…目つきが本気だし。


「…仕方ないなあ…一回だけだからね」

「さっすが愛香!」


…"あーん"なんて…私、やったことないんじゃ…。

しかも、一応拓也は友達だからね。

こういうの、普通恋人同士でやることでしょ?


スプーンに一口分のオムライスをすくう。

何だか手が震える。


私…絶対に顔真っ赤だよ。

嫌なんだけど。

かなり恥ずかしいんだけど。

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