《MUMEI》

声が、体温が、確かに七生だ。凄く暖かい……。なんか、身体が強張る。


「またあ、ふざけるんだから……」
さりげなく離れるつもりだった。七生は更に俺の身体に巻き付いている腕に力を入れた。


七生じゃないみたいだ。



「由加里姉、酒飲むとキス魔じゃん……吐くまで飲んでもまだ感覚忘れられない……






妊娠したんだってさ。幸せそうだった。」
七生の酒臭い口から由加里姉の里帰りの理由が判明した。
そして、この手は背丈、骨格、平たい胸、俺を通して由加里姉を探しているんだ。



「……だから、忘れたくて俺に絡んできたってか?



友情と愛情の区別もつかんのか馬鹿タレ!」
七生の脇腹に肘を食らわす。床で小さくうずくまっていた。


「区別してる、……二郎なら甘えられるかと思って、忘れさせてくれる気がして……失敗した。」

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