《MUMEI》
ヒマワリ畑―秘密の場所―
今宵と歩雪は人気の無い田舎道を10分弱歩き続けた。

もちろんあまり整えられていない道である。

2人の住んでいる街は都心から少し外れている為、こういう場所も足を伸ばせば来る事ができるのだ。

しかし都心から外れているとは言っても、それなりにビルや大型店も建ち並んでいるため、2人の前には見慣れない風景が広がっている。

歩雪は緑の木々が青々と茂っているのを見て、ポツリと呟いた。

「そう遠くに来たわけじゃないのに、こんなとこがあるんだね」

「ホントだよね!!でもこういうところ、好きなんだ!!何か新鮮で」

今宵は歩雪の言葉に頷くと、大きく伸びをした。

「じゃあヒマワリ畑も本当にキレイなんだろうね」

「うん!!すっごくキレイだよ!!たぶんそろそろだと思うんだけど・・・・・・」

今宵は先を見渡す。

たしかこの辺だよね?

何回も来てるから間違うことは無いと思うんだけど・・・・・・。

「あ」

「何?」

歩雪が突然声をあげたので、今宵は聞き返す。

「あれ、だよね。黄色いし」

「え。ホント!?」

「ほら」

今宵は歩雪の指差す方向を見た。

すると、黄色い絨毯のように広がっている場所が見える。

「あそこだ!!行こう!!歩雪くん!!」

「ちょっと。速いよ」

猛ダッシュで走り出す今宵の後を歩雪は慌てて追いかける。

待ってらんないもん!!

ずっと楽しみにしてたんだから!!

今宵は黄色い絨毯の前まで来ると立ち止まり、思わず声をあげた。

「う、わぁ・・・・・・!!キレイ・・・・・・」

やっぱり変わってない・・・・・・。

今宵にやっと追いついた歩雪も、目の前い広がる光景に唖然とする。

「・・・・・・凄い」

2人の目の前に広がるのは、黄色い絨毯のように敷き詰められた、沢山のヒマワリ。

数え切れないほどのヒマワリ達は、顔を一生懸命上げて、あふれんばかりの太陽の光を浴びている。

集めた光を反射して、ヒマワリそのものがキラキラと光っているようだ。

今宵も目を同じようにキラキラさせて、歩雪の洋服の裾を引っ張る。

「中、入ろうよ!!歩雪くん!!」

「中?この中に入れるの?」

「もちろん!!行こー!!」

今宵は驚いた顔をしたままの歩雪の腕を掴み、そのままヒマワリ達を掻き分けて進む。

このヒマワリ達の中にいると、すごく温かくなるんだよね。

凄く安心する―。

表情を綻ばせながら進む今宵に、歩雪は辺りを見渡しながら声をかけた。

「こー。どこまで行くの?」

「んーとね、中心?」

「中心ってこのヒマワリ畑の?」

「そうだよー」

歩雪の質問に答えながら、今宵はズンズンと前に進む。

「何かあるの?そこに」

「うん!!たぶん他の人は知らないよ!!あんなとこまでは行かないだろうしね」

「それはそうだろうね」

今宵達はもう既にかなり中のほうにいる。

他の見物客は遠くから見て終わりだろうから。

歩雪は今宵について行きながら考えた。

やがて、今宵がガサッと大きな音を立てて立ち止まった。

「んしょっと!!ここだよ!!」

「え?」

2人の目の前には、ヒマワリのアーチで出来ている小さい空間があった。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫