《MUMEI》
ヒマワリ畑―風と心の音―
「何?ここ」
「うーん。私も良く知らないんだけど、たまたま見つけたんだ!!いいでしょ?ここ」
まだ呆気にとられている歩雪の腕を引いて、今宵は奥へ進む。
その空間は今宵でも少し頭を下げなければ入れないほどの小さいもので、歩雪は屈むようにして入った。
しかし、入る時は少し苦労するものの、中は少し開けている為狭いとは感じない。
「凄いよねー!!自然にこんな空間が出来てるんだよ?見つけた時はすっごい驚いたんだよ!!」
「外からじゃこんなのあるって気づかないしね」
「うん!!だから私の『秘密の場所』なんだ!!」
今宵はニッコリと笑うと、鞄からレジャーシートを取り出して広げた。
「はい、どーぞ!!」
「ありがと。こういうのもちゃんと用意してあるんだね」
「毎年のことだから!!」
今宵はすとん、とシートに腰を下ろすと、歩雪に隣に座るよう促した。
「気持ちいいよね」
「ん。日陰で風も通るしね」
2人はそれっきり口を開かない。
サワサワとヒマワリが揺れる音だけが耳に届く。
気まずい・・・・・・。
な、何か緊張してきたっ。
自分からここに歩雪くんを連れてきたくせに!!
今宵の心臓の動きは速くなる。
「こー」
「うひゃい!?」
今宵は突然声をかけられ、上ずった声で答える。
緊張しすぎて声裏返っちゃったよ〜!!
顔を赤くして慌てている今宵を見て、歩雪は思わず吹き出した。
「ははっ!!何それ・・・・・・!!」
「しょ、しょうがないじゃん!!何か出てきちゃったんだから!!」
む〜。
歩雪くんてば失礼なくらい笑っちゃって!!
ぷー、と膨れる今宵に、歩雪は突然真剣な顔つきになり、尋ねる。
「何でオレをここに連れて来たの?」
「え?」
「ここはこーの大切な場所でしょ?どうして?」
「どうしてって・・・・・・」
まさか『歩雪くんもここと同じぐらい大事だから』なんて言えるわけないし・・・・・・。
俯いていた今宵の顔を、歩雪はくいっと上げさせる。
「教えて?理由」
歩雪の目は今宵を捕らえて離さない。
ど、どうしよう・・・・・・。
何て言えばいいの・・・・・・!?
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