《MUMEI》

傷ついてたのか……七生





七生を無視し居間から出る。玄関の窓から外を見た。塀の向こうには柊荘がある。

頭がクリアになってきた。

俺が水瀬にフラれたとき、七生達が支えてくれたんだ。

大分回復したけど、水瀬と会話する度に胸が苦しい。あいつは今日また新しい傷が増えたんだ。


顔ははっきり判らなかったけど声が追い込まれているものだった。

俺に忘れさせてくれとキスを迫るくらいに……





俺で満足出来る程浅いもんじゃなかったくせに

由加里姉が結婚してもまだ気持ちが向いているくせに




早紀さんにしても、タイプは違えど七生が今まで交際してきたのは年上長身のどこか由加里姉を彷彿とさせる美人だった。


そこまで知ってて俺は……




キスはないけど何かもっと良い選択肢があっただろうに。




脇腹を押さえて小さく踞る七生を思い出すと肘が痛んだ。

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