《MUMEI》
ヒマワリ畑―2つのプレゼント―
「ふ、歩雪くん!?」
今宵は顔を赤くしながら、歩雪に動揺を隠し切れず声をかける。
何でこんなことに!?
歩雪は黙って今宵の耳元に口元を近づけた。
「ひゃっ・・・・・・」
近くに歩雪の気配を感じた今宵は、思わず声をあげる。
うぅ・・・・・・。
ドキドキしすぎてわけ分かんなくなってきた!!
「・・・・・・好き、だよ」
「え?」
今宵は、歩雪が耳元にポツリと小さく呟いた言葉に驚きを隠せない。
今、何て言ったの・・・・・・?
「小さい頃からずっと好きだった」
ホントに・・・・・・?
嘘じゃないんだよね?
歩雪がもう一度囁くように言った言葉を聞いて、今宵は堪らず口を開いた。
「私も・・・・・・。ずっと好き、だったよ」
この言葉を聞いて、歩雪は腕の力をキュッと強める。
ずっと、隣にいていいんだよね・・・・・・?
今宵は驚いて硬かった表情を緩めながら、歩雪の広く大きい背中に手をまわした。
「ありがと。こー」
「ううん。こっちこそ」
2人は少しずつ離れると、顔を見合わせて微笑む。
恥ずかしいけど、歩雪くんの顔見ると何かすごく嬉しくなる。
「こー。ちょっと目瞑ってて」
「え?うん」
歩雪の言葉に、今宵は大人しく従う。
何だろ?
かくれんぼ、ってことはないよね・・・・・・?
今宵に歩雪が覆い被さった。
そして、今宵は首に僅かな重みと冷たさを感じる。
「いいよ、目開けて」
今宵はゆっくりと目を開けると、初めに優しく微笑んだ歩雪の顔が映る。
次に映ったのはさっき違和感を感じた自分の首だった。
え?
これって・・・・・・。
「ネックレス・・・・・・?」
今宵の首には見たことが無いネックレスが掛かっていた。
銀のチェーンに控えめな大きさの花。
花は光の当たる角度によって色が変わり、キラキラと輝いている。
「いいの?これ・・・・・・?」
「ん。プレゼント」
「え、でも・・・・・・!!」
もう、さっきの言葉で充分だったのに・・・・・・。
今宵が呟くと、歩雪は口元を緩めた。
「オレがあげたかったから。受け取ってくれないの?」
「え、ううん!!ありがと!!大事にするね!!」
今宵は慌てて首を振ると、飛びっきりの笑顔を浮かべた。
「ん。そうして」
歩雪はもう一度今宵を腕の中に閉じ込める。
強く、逃げていかないように。
今宵も歩雪の背中に腕をまわすだけでなく、キュッと力を込めた。
強く、離れていかないように。
2人の周りには、先ほどと同じように風がヒマワリを揺らす音だけが響いていた。
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