《MUMEI》
恨み
「この時間帯にね、もののべ様を呼びよせて恨みたい人の名前を言うと何かが起きるんだって。」

歩美は淡々と喋る。

なーんだ、ただの遊びみたいなものか。

「そーなんだ」

私は適当に返事をする。

「遊びじゃないからね、もののべ様は本当にいるんだからね。恨んでやる……」

一瞬背筋がゾクッとした気がした。

向こうから誰かがやってくる…もののべ様?

「あ…、歩美」

「ほら、ちゃんと来たでしょ?もののべ様」

歩美はニタァと笑う、怖い。とっさにそう感じた。

美術室の気温が下がっていく。

明かりがどんどん近づいてくる。

「恨んでやる…恨んでやる…恨んでやる…」

急に呪文みたいに喋りだした歩美。

「歩美っ!!」

「ヲヌノネイオワラカナエル」

明かりは遠くなのに、声がすっごく近くに感じる。歩美の目は虚ろ。

「亜紀を…亜紀を…」

気温が低い美術室の中で、亜紀を…という言葉が響いた。

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