《MUMEI》

「…あ、そういえば愛香」

「なにー」


チラッと拓也に視線を向けた。

すると奴は、ちょっと難しい顔をしてて。

…何か言いにくいこと?

あ、もしかして…。


「…しっ…知ってるか?あの…矢崎と安倍莉奈が…」

「付き合い始めたこと?それなら知ってるよ」

「え…何か…普通な反応…」


11月の始め頃。

二人が手を繋いで帰ってるとこをたまたま見たんだ。

その次の日、亜希に散々そのことを聞かされ、心配され。

百合も何か言いたそうな顔をずっとしてた。

そして…安倍莉奈と一回すれ違った時、勝ち誇ったような顔をされた。

…あの子、どんだけ私のことライバル視してたんだろ。

私が拓也と付き合い始めてからも、何か分からないけどすれ違う度に睨まれてた。

まあ…私が健太と付き合ってたからだと思うんだけどね。

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