《MUMEI》
美樹の怒り
「ちょっと!なんであいつ誘ったのよ!?」
井上が去った後、美樹が睨みを効かせながら洋平に問い詰めてきた。
それを見ていた優香と真弓、司までもが同意見だった。
「いや、だって行きたそうだったし…」
「だからって、わざわざ誘わなくたっていいじゃん!」
「んな事言われても…」
「だいたい丑三つ時って夜中の二時でしょ?親に見つかったりでもしたら…」
「まぁ、落ち着いてよ美樹。」
美樹に散々責められ、タジタジになっていた洋平に、漸く助け舟を出してくれたのは優香だった。
「別にいいじゃない、井上君が来たって。折角の夏休みだよ、楽しまないと損だって。」
優香自身も本当は嫌な筈なのに、一言も洋平を責めることはしなかった。
きっとこの優しさに司は惚れたんだろうな、などと思いながら、美樹の怒りを沈めてくれた優香に感謝した。
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