《MUMEI》

「……私は、死にたかった。でも、今は」
途中、言葉を区切ると少女は紫陽花の前へと膝をつきながら
「解らない。けれど、生きてヒトを想ってみたい。そうも思ったから」
始めて抱いた(想い)
せめて一時、ほんの僅かな間だけでも、と
花と化してしまった同胞達にソレを切に願う
その小さな身体を井原は背後から抱いてやりながら
「……生きててやれ。コイツらの分までな」
徐にそれだけを耳元へと呟いてやった
少女は小さく頷き、井原の腕の中で身を翻すと
細いその腕で井原の身を抱き返していた
「……なら、私と生きて。死ぬまででいいから」
井原の骨と化したままの左腕を柔らかく取りながら
少女は縋る様にその手を頬へと当てる
温もりなど無いだだろうそれに、だが安堵の表情を浮かべながら
井原達は紫陽花の彩りに、暫く見入ったのだった……

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