《MUMEI》

わたしはそっとパンジーの花に触れた。

春らしい可愛い花、わたしの大好きな花。

なのにこんな花達にまで嫉妬するなんて…。

「マジでガキ」

苦々しく呟いてしまう。

本当に自分が子供でイヤんなる。

先生と17歳も歳が離れているのがいけないんだ。

せめてあと10歳…いや7歳ぐらい、わたしの歳が先生に近かったら良かったのに。

「こら。花に向かってなんて言葉をかけているんだ、お前は」

「わっ、先生!?」

いつの間にか、先生が温室の扉を開けて中に入って来た。

「何かおもしろくないことでもあったのか?」

ジョウロに水を入れながら聞いてくる先生が、ちょっと憎らしい。

「うん、まあ…恋愛のことでちょっと」

立ち上がり、先生の顔色を見ながら言ってみる。

「そっか」

…だけ? ノーリアクションも良いところ。

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