《MUMEI》

春に咲く花で何が一番好きか聞かれて、わたしはパンジーとスミレと答えた。

その時も、今みたいに先生と二人っきりだったんだけど…。

わたしは水道で洗った手をハンカチで拭きながら、先生の背中を見つめた。

「じゃあ先生は、わたしの為に花を咲かせてくれたんですか?」

ビクッと、後ろから見ても分かるぐらいに先生の背中が動いた。

…ウソ? あっ、いや。本当だったの?

カーッと顔が赤くなるのを感じる。

けれど先生の顔も、赤く染まっているのが見える。

わたしはゆっくりと先生の背中に近付いた。

そしてそっとその背中を後ろから抱き締める。

「…先生、覚えててくれたんですか? わたしの告白」

「わっ忘れるワケないだろう」

動揺している先生は、とても17歳も年上とは思えないほど可愛かった。

「じゃあ…本当に結婚してくれますか?」

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