《MUMEI》 力尽き「申し訳ありません」 樹は敬語になっていた。 アラタはやっとで口がきけるようだ。 「大馬鹿者、戻ってくるのが遅い。」 しかしその響きはぶれなかった。 首筋に樹の指の痕がはっきり写っている。 「殺そうとしてしまった……?俺が、父さんに貰ったこの体で……この手で 」 樹は膝をついて震え出した。アヅサを呼びたくて仕方がない。 「 高柳 樹! 目の前の現象から逃げるな!」 アラタの声が樹に振りかかる。凄みが以前にも増した瞳だった。 その場に括りつけられたように体は静止し鼓動は穏やかになる。 「…………はい。」 「お前のアヅサとやらを煽ったんだ。 信用ならないなら聞いてみな。」 アラタは自分の首を指で触っていた。 「あれは若菜だった……」 「俺は何も見ていないから知らない、判断は全てお前のものだ。」 前へ |次へ |
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