貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
彼女の好きだった人。
「高校やめて、最初にバイトした店。イタリアンレストランのチェーン店だったんだけど、そこであたしはウェイトレスをしてたんだ」

「へぇ…」

「正直云って、そんなに時給の良い店じゃなかったんだけど、仕事自体は楽しかったな」

自虐的に微笑んで、アイスコーヒーを一口啜るアキ。


「なんで楽しかったのかって云うと、…ここで本題に入るんだけどさ、恋をしたんだよ」

「うんうん」

「…その人は本社の地区マネージャーかなんかで、面接の時からあたしは気になっててさ。合格の電話受けて、研修の時も担当で、意識せざるを得ないくらい毎日近くに居たんだよね」

ここでアキはもう一度アイスコーヒーに手を伸ばす。
コク、と喉が鳴る。


「左手の薬指に光るモノがあるのには気づいてたんだけど、見て見ぬ振りしながら猛烈にアプローチを仕掛けてた」

「それって……?」

「うん、『不倫』。分かってたけど、どうしようもなかった」



聞いちゃいけないことかも知れない。
けど、アキの『タブー』をわたしも共有したくて仕方がなかった。

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