《MUMEI》
五月
その頃の私の海は、

季節は春にも関わらず、

極寒の海のようだった。

日は当たんないし、

冷え切ってるし、

誰も海に入ってこない。

誰も海に近付こうとはしないんだ。

近付いてくるのは

冒険心の強いカモメや、

海をつついては、再び飛び去る渡り鳥。

いずれも、興味本意の塊に魂が宿った

様なものにすぎなかった。






ただ一成を除いては…。










一成と初めて話した日は、

初めて同じクラスに一成ってゆう

存在に気付いた日だった。


五月…。

その頃になると、

私はたいてい友達との放課後の誘いを

断って、一人で

教室の窓から景色を眺める事が増えた。

七階建ての学校の七階から見る景色は、

その街が全て自分のものであるかのように

感じる。

空もよっぽど近くなり、

不思議な気持ちになる。

空と話しをする度に、

私は勇気がわく気もした。

いつもの自分ぢゃなくなれる気がした。

少しだけ、前を見られる気がしたんだ…。






「あ-、空ってすごいわあ…」


何をする訳でもなく、

空を景色を眺めて楽しんでいた…。



ガラガラララララ…。

突然教室のドアが開いた。





「神崎さんぢゃん!

神崎さんも忘れ物-?」


そう、一成だった。

…なるほど、こういう馴れ馴れしい性格が

人から好かれるんだ。




「いや、そういう訳ぢゃないんだけどね。

ただ、景色眺めてたんだあ。」

私もいつもの明るい口調で答えた。

一成は何がおかしいのか

腹を抱えて笑い出した。



「ははは…。神崎さんの以外な一面

見ちゃったあ!」


「以外?」


「うん、何かさあ、

景色とか一人で見てるよりも、

友達とワイワイしてるイメージあるし。」

そう言いながら、忘れ物を探してた一成。


「ふぅーん。 そんなイメージなんだ^^

でも、案外、放課後は一人が多いよ-。」


「へえ…。

なんかさ-、神崎さんってさ、

時々遠いとこ見てるっていうか、

寂しそうな顔するっていうか、

…んー、うまく言えンけど、

悩み事?」



初めて言われた。

っていうか、そんな風に見えるんだ…。

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