《MUMEI》

見世物小屋は、フイリプには、まだ夢でも見ていたかのような出来事で、鬼女のような風貌だった妻もすっかり、昔の思慮深い面影を取り戻し、退院していた。

そんなある日、フイリプが、街をふらふらしていると、路地裏の露店の中に、毒々しい色味のテントが張られていた。

テントの周りは、木造建築物と煉瓦の間に挟まれ、足元を引っ張られるような、独特な、雰囲気の、日陰だった。

そこに、踏み込んでは、いけない、という思考もあったが、一方で、磁場のように、強く、引き寄せる力があった。


壁には、あの頃と変わらずに、上りが立てられ、チラシが貼られていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫