《MUMEI》 みんな5そうして、じゃれあいながら歩いていたが、清人がふと足を止めた。 後ろの方を歩いていた彩矢を、見つけたからだ。 「彩矢ちゃ〜ん!」 彩矢は大きな声で呼びながら手を振る清人に気付いて、顔を上げたが直ぐに俯いてしまった。 清人は仕方なく、彩矢の元に走って行った。 「あ〜やちゃんっ!」 彩矢の顔を覗き込むが、顔を背けられてしまった。 「ね〜、そんな嫌わないでよ、この赤い髪もさトマト班だから仕方なくしてんだよ?トマトへの愛を感じない?」 彩矢は清人を無視して、歩き続けている。 「ダメ?こういう冗談あんま好きじゃない?」 「……」 「見た目と違って中身はお茶目さんでしょ?仲良しになれる気しない?無理?」 「……」 「ね〜!や〜だ〜よ〜!ちょっとくらい相手してよ〜!」 「もう、やめとけよ」 見かねた涼介が、清人を止めた。 「会話どころか目も見ないって…話になんなくね?」 清人は苦笑した。 裏庭に出ると畑があり、各グループごとに、作業をしていた。 何をしたらいいかわからず、立っていた彩矢の目の前に、篭が差し出された。 横を見ると、涼介が立っていた。 「初めてだもんね、何したらいいかわかんないよねぇ。大丈夫だよ、最初はみんなそうだから」 涼介が笑顔で言う。 「すぐにここでの生活が楽しくなっちゃうんだから〜」 黙っていると、今度は冷めた表情で涼介が言う。 「とか言われただろ?英里に…」 彩矢が頷くと、涼介は鼻で笑った。 「お決まりだな。ここでの生活が楽しくなるんじゃない、少しでもラクになりたくておかしくなるんだよ…みんな」 彩矢には涼介が言わんとしている意味が、わからなかった。 前へ |
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