《MUMEI》 トイレ僕は置いて行かれないように、小走りで陽菜について 行った。 「どこに行くの?」 陽菜は何も答えず、ただ歩いて行く。 仕方なく僕も、黙って陽菜の後ろを歩いた。 暫くすると、昔よく遊んでいた公園に着いた。 陽菜は、そのまま公衆便所に入っていく。 「なにしてんの?早く入りなよ」 入り口で立ち止まっている僕に、陽菜が言った。 「でも……そこ、女子トイレだよ?」 「なに言ってんの?アンタ学校で女子トイレ使ってんでしょう?」 陽菜が、そう鼻で笑った。 仕方なく僕は、女子トイレに入った。 中に入ると、陽菜が個室に入った。 僕もそれについて行くと、陽菜が振り返った。 「ちょっと!こんなとこまでついて来る気!?そこにいてよ」 「……ごめん」 陽菜は勝手だ。 ついて来いって言ったり、ついて来るなって言ったり…。 陽菜が個室に入って暫くすると、陽菜が用をたす音が聞こえてきた。 僕は思わず、扉に近づいて耳をつけた。 陽菜は今、オシッコをしてるんだ…こんな薄い扉の一枚向こうで陽菜は、 アソコを丸出しにしてるんだ…。 そう考えると、興奮せずにはいられなかった。 (陽菜…陽菜……) 心の中で何度も、名前を呼んだ。 そのとき、扉が開いて僕は前に倒れかけた。 そんな僕に陽菜が平手打ちをした。 「なにしてんの」 「……ご、ごめん」 「やっぱり、あたしじゃなきゃダメなんでしょ?言ってたもんね…あたしでエッチなこと考えてるって」 僕は、なんて答えたらいいかわからなかった。 「正直に言いなよ……あたしじゃなきゃダメだ、って」 陽菜じゃなきゃダメに決まってる。 自分の欲望を満たすときは、陽菜のことしか考えたことがない。 普段だってそうだ。僕は陽菜以外の女のことを考えたことがない。 でも、そんなこと言えるわけない。 陽菜じゃなきゃダメだ、陽菜のことしか考えられない……僕はずっと、陽菜が好きだった。 なんて…そんなこと、本人に言えるわけない。 そんなこと言えてたら今頃……── 「ねぇ、そうなんでしょ?あたしじゃなきゃダメなんでしょ?」 陽菜が言う。 「どうなの?」 僕は勇気を振り絞って、小さく頷いた。 「そう…だったら、してきてよ…この個室で」 陽菜は今、自分が入ってた個室を指差した。 「できるでしょ?」 僕は陽菜に鞄を返し、言われるがまま陽菜が入っていた個室に入った。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |