《MUMEI》
昼食
少しの沈黙の後、ふとタイキは気がついた。

「そういえば、車の免許持ってんの?」
 タイキと同い年だったとしても、初心者のはず。
しかし、車に初心者マークはついていない。
この質問に、ミユウはニヤと悪そうな笑みを浮かべて横目でタイキを見た。
「…マジで?持って、ない?」
ミユウは笑みを浮かべたまま頷いた。
「…停めてくれ。つうか、今すぐ降ろしてくれ」
「なんで?」
「なんでって、無免許運転は同乗者も罪に問われるんだよ!知ってるだろ」
「捕まらなければいいんでしょ」
「いや、そういう問題じゃ…」
「大丈夫。わたし、捕まったことないから」
「だから、そういう問題じゃ」
「ほら、ついた」
タイキの言葉を無視して、ミユウは車を駐車場に入れた。

「……昼飯って、ここ?」
 窓から外を見ると、見慣れた看板がタイキを迎えていた。

そこは誰もが知っているファーストフードの店だった。
タイキも普段から利用している。

「何か文句あるわけ?」
車から降りながら、ミユウは言った。
「いや、別に」
タイキも車から降りる。

帰りは歩いて帰ろうと心に誓いながら。

「あ、言っとくけどおごらないから。自分の分は自分で払ってね」
カウンターの前ですかさずミユウが言った。
「へいへい」
最初からおごってもらえるとは思っていなかったので、タイキは文句も言わずに財布を取り出す。

二人は注文を済ませると、窓際の席に座った。

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