《MUMEI》
微笑みの裏
「なにがあったのかわかんないけど…泣かないで?大丈夫だよ、眞季ちゃんには今森さんがいるんだから……それに、あたしだって…」






……そうだ。


僕にはいつだって、陽菜がいた。
だから僕は頑張ってこれた…。みんなに馬鹿にされたって、いじめられたって陽菜がいたから平気だった。


陽菜だってそうだ。
僕がいたから、陽菜も頑張ってこれたんだ。
僕たちは、どっちが欠けてもいけないんだ……。



いつも二人一緒じゃなきゃいけないんだ。



陽菜が僕を見捨てるわけがない、見捨てられるわけがない。
そんなこと、昔からわかってたじゃないか。



佐野さんの言葉で僕は、目が覚めた。







…──放課後、僕は陽菜を教室まで迎えに行った。
陽菜は僕に気付くと、微笑んだ。


陽菜の笑顔を見たら、安心した。
やっぱり、あのまま口をきいてくれなくなるわけがない。
僕を無視するわけない。

「佐野さんは?」

陽菜が言った。

「…教室にいるけど?」

「そう…じゃあ、呼んでこなきゃね……佐野さんがいなきゃアンタを喜ばせてあげられないもんね」

そう言うと陽菜は、佐野さんを呼びに行った。
そして、僕と佐野さんを朝行った公園に連れて行った。






「公園なんて久しぶりかも……ここの公園広いねぇ」

僕は嫌な予感しかしないのに、佐野さんは何も知らずにはしゃいでいる。

「佐野さん、今日もこの子のことお願いしたいんだけど…いい?」

僕の持っている鞄の取っ手を、ぐいっと引っ張りながら陽菜は言った。

「……眞季ちゃんの為なら」

佐野さんは少し驚いた顔をしていたけど、すぐにそう答えた。



その少し嬉しそうな表情が、僕は不気味にさえ感じた。

「じゃあ、あそこのトイレに行こ?」

そう言って陽菜は、公衆便所に向かって行く。

「待ってよ!」

僕は止めようとしたけど、陽菜に睨まれて何も言えなかった。
中に入ると陽菜は今朝、自分が入ってた個室の扉を開けた。

「この子ね…、どうしても佐野さんにオシッコかけて欲しいって言うの…だから…お願い、佐野さんしてあげて?」

佐野さんが、困惑した表情で僕を見る。

「……そうなの?」

そんなこと…して欲しいわけがない。
でも、そんなこと言ったら陽菜を怒らせちゃうんだろうか……。
そう考えていると、陽菜が言った。

「そうだよね?」

僕は何も答えられずに俯いた。

「恥ずかしがらないではっきり言っちゃえばいいのに」

そんな陽菜の言葉を聞いて、佐野さんが決心したように言った。

「わかった……あたし、やるよ…眞季ちゃん、あたし頑張る」

「ふふっ…良かったね」

僕は陽菜の満足そうに微笑む陽菜を見たら、断ることができなくなっていた。

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