《MUMEI》
肝試し当夜
.
水曜日、丑三つ時。
零時を過ぎているから、正確には木曜日になる。
今年の夏は猛暑になるらしく、夜中だというのに酷く蒸し暑い。
待ち合わせ場所である公園には、洋平を除く五人が既に集まっていた。
「あいつ、やっぱり遅刻だよ…」
「自分から言い出したくせに!!」
時間にルーズなのは分かっていたが、こんな時にまで遅刻されては堪ったものじゃない。
未成年が夜中に出歩いている所を誰かに見られてしまったら、面倒な事に成り兼ねないではないか。
「わり〜っ!!」
五人が集まってから十五分後、自転車が全力疾走しながら公園内に入り込んできた。
「本当にごめんなさい!」
汗だくの洋平が、深々と皆に謝罪する。
「ちょっとコイツを探してたんだ!!」
そう言って、洋平は自分の首に提げたカメラを皆の方へ差し出した。
「デジカメ?」
「おう!心霊写真撮んだよ!!」
「やだぁ!」
口は嫌がっているが、顔は笑っている女子達。
「早く行こうぜ?」
やはり井上は、このキャピキャピした雰囲気が好きではないらしく、熱帯夜に似つかわしくない程の涼しい顔でサラリと言った。
「そうだな、じゃあ行くか!」
今の井上の言葉で、皆のテンションが下がらないよう、洋平はわざと明るく振る舞い、そして目的地に着くまで、用意していた取って置きの話を皆に聞かせ始めた。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫