《MUMEI》
男の正体
僕たちと同じ学校なのがわかれば、調べるのは簡単だった。




名前は、真鍋隼人(マナベ ハヤト)。
三年A組、バスケ部の部長。


女子に人気が、あるらしい。



三年が陽菜になんの用だろ う……。
少し考えてから僕は、ハッとした。


佐野さんが言っていた。
陽菜は先輩にも人気がある、と…。




真鍋は陽菜を、騙そうとしているんだ…。
真鍋は陽菜の体が、目当てに違いない。



バスケ部で女にモテる男だから、噂の的になってる陽菜も、自分のものにしておきたいんだ…。


陽菜を襲う為に、爽やかぶって陽菜に近付いてるんだ…。





陽菜が危ない!






僕は陽菜の家に向かった。
いつ真鍋が陽菜を襲いに来るかわからない。


僕が陽菜を守ってあげなきゃ…。


体格の差を考えると、勝てるとは思えなかったけど、陽菜を守る為なら多少の怪我は仕方ない。




そんなことは慣れてる。
あの時だって、そうだった。


…───





いや、今はやめておこう。
思い出したくない。








僕は陽菜の家の前で、見張ることにした。


朝まで家の前で見張っていたけど、真鍋が来る気配は無かった。
やがて登校時間になり、陽菜が家から出て来た。


僕を見ても驚いた様子もなく、 何も言わずに歩き出した。

「待ってよ!」

思わず陽菜の腕を掴んだ僕に、陽菜は悲鳴のような声で、

「触んないでよッ!!」

と言うと、思い切り平手打ちをした。



そんな取り乱した陽菜を初めて見た僕は、呆然とした。
陽菜は、ひとつ息を吐くと言った。

「要らないって言ったでしょ…もう、あたしに近付かないで、話し掛けないで」

「……本気なの?」

「当たり前でしょ」

陽菜は吐き捨てるように言うと、また歩き出した。

「ねぇ、待ってよ!」

そんな陽菜の後を、僕は追った。



本気なわけない。
僕たちは、どっちが欠けてもいけないんだから…。
陽菜が僕を、捨てれるわけない。





逆らったから?






きっとそうだ。
僕が逆らったから、陽菜は怒ってるんだ。


でも僕が一晩中、陽菜を守っていたことを知ったら、陽菜も許してくれる…。 僕が陽菜を、ちゃんと愛してることが伝われば、陽菜だって安心してくれるに違いない。

「ねぇ、陽菜?僕…昨日ずっと見張ってたんだ、ヘンな奴が襲いに来て陽菜を傷つけないように」

僕が言うと陽菜は、立ち止まって振り返った。

「知ってるよ…窓から見えた……」

「そっか…」

「そうゆうのいらないから」

僕は陽菜の言葉に、唖然とした。

「……いらないって?」

陽菜は、あの男が襲いに来てもいいって言うんだろうか……。


僕の声は震えていた。

「あたし、そんなことしてなんて 頼んでないでしょ?…アンタは、 あたしに言われたことだけしてればいいの…勝手なことしないで」

「じゃあっ!……じゃあ、買ってくるよ!今からコンビニ行ってコンドーム買ってくるよ」

買って来たら、陽菜は許してくれる……。
そう思って僕は、必死だった。
陽菜は溜め息をつくと、言った。

「……好きにしたら?」

僕は走った。
陽菜に機嫌を直して欲しくて…。






コンビニに入ってコンドームを取り、 レジ向かった。
女の制服を着ているせいか、女がコンドームなんか買いに来たと思ってるのか店員は一瞬、変な顔で僕を見た。


けど僕は、そんなのを気にしてる暇もなく、足早にコンビニを出て、陽菜の元へ走った。

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