《MUMEI》
不安
僕は佐野さんに後ろを向かせ、 フェンスに手をつかせてから、充分すぎる程によく濡れたソコに反り立った欲望を、勢い良くねじ込んだ。

「ぁああぁあああッ!!」

悲鳴に近い声を上げながら、崩れ落ちそうになっている佐野さんの体を支え、僕は夢中で腰を振った。


お腹の中でゴルフボールが動き回り、僕の肉棒が体の内側から刺激されている感覚に襲われた。
すぐに達してしまったような感覚になるけど、本当に達しているのかどうかわからない不思議な感覚……。





どのくらい時間が経ったのかわからない……。




佐野さんは崩れ落ち、もう声すら出ていなかった。
僕も足がガクガクと震えている。
でも腰が止まらない…イッたのかどうか、自分でもわからない…。

(もう、ダメだ…)

そう思ったとき、声が聞こえてきた。


声は、どんどん近付いてくる。
僕は急いで、佐野さんから離れた。
僕のモノは名残惜しそうに、まだビクンビクンと脈打っていたけど、なんとか手で隠しながら屋上を後にした。


また佐野さんに怒られるかも知れない…。 そう思ったけど、仕方ないんだ……佐野さんとあんなことをしているところを見られたら、僕が男だってバレてしまう。
そしたら、陽菜がなんて言うか…。



陽菜が喜んでくれれば、それでいいんだ…。



だから…


だから佐野さんなんて、邪魔なだけなんだ。


僕に付きまとう佐野さんも、陽菜を騙そうとしている真鍋も……




邪魔なだけなんだ。







消えて無くなればいい。







…──放課後、いつものように陽菜が僕を迎えに来た。


幸いにも佐野さんは、具合が悪いと言って今日は一日中、保健室で寝ていてまだ戻ってくる気配が無い。
久し振りに陽菜と二人きりで帰れる。
それに今日は、ゴルフボールを入れたまま頑張っていたから、陽菜から何かご褒美が貰えるかも知れない。



いや…、もしかしたら犬が飼い主に褒めてもらうみたいに“よくやった”の一言かも知れない。


でも僕は、それだけでも充分だ。
陽菜が喜んでくれるだけで満足だ。


僕は陽菜の喜ぶ顔が早く見たくて、陽菜の元に走って行った。





「……今日は先に帰って。待ってたりしなくていいから」

駆け寄った僕に、陽菜はそう言った。

「……なんで?」

「用事があんの」

「用事ってなに?僕も手伝うよ」

心配してそう言った僕に、陽菜は溜め息を吐いて少しイライラしたように頭を掻くと、

「…うざいなぁ……アンタなんかに手伝えることなんて、なにもないから」

と言った。
だから僕は、言った。

「あるよ!陽菜の言うことならなんでも聞くもん!今日だって……」

言いかけて僕は、息を吐いた。
それから、小さな声で続けた。

「今日だって…ずっと入れたままにしてたんだ…陽菜に言われた通りに……」

「あぁ…あれ?」

陽菜がふっ、と笑った。

「まだ入れてたんだ…そんなの早く出しなよ、恥ずかしい子」

僕は陽菜のその言葉に、唖然とした。
褒めてもらえると思ったのに……「頑張ったね」って、褒めてもらえると思ったのに…。

「あたし、もう行かなきゃいけないから」

陽菜はまるで、遊び飽きたオモチャを捨てるかのように、僕を置いて行った。



僕の中を不安が駆け巡る。
今まで酷い虐め方をされてきたけど、こんなふうに置いて行かれたことはなかったから。
陽菜が何か、隠しごとをしてる気がした。

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