《MUMEI》 「嗚呼、こんなところに、早くしないとお義母様が待っております。」 あの後、妻は懐妊し、息子が二人生まれた。 次男はつい、ひと月前だ。 まだ母親に掛かり切りの年齢であったが、妻の母方の曾祖父が亡くなり、母に子供を預けた、葬儀の帰りだった。 線香臭い礼服に、身を包み、自身の、死臭を、隠している。 死の淵でなら、走馬灯で、また、あの美に出会えるかもしれない。 その一心で、フイリプは、その何度も、滝壺に向かっていた。 しかし、妻にいつも、身を投じようとするところで、止められていた。 狂った妻より、今の妻の方が、フイリプには、脅威である。 首輪で、繋がれた犬が、歩いているが、フイリプは、それに共感した。 引き寄せる、見世物小屋の陰を、引きちぎるように、帰りを急かす彼女は、フイリプを、押し込めている。 前へ |次へ |
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