《MUMEI》
同じ穴
その頃の私は処女なんか、とっくに捨てていた。





兄に奪われたわけではない。
兄が持っていた気味の悪い道具で、私の初めては奪われた。


あの冷たい感触と下腹部を圧迫される感覚は、今思い出しても吐き気がする。


エスカレートしていく兄の『遊び』と 暴言が、私の中の『男』というイメージを最悪にしていた。


だから眞季と出会ったときは、かなりの衝撃を受けた。
白い肌や小さくて細い体。顔のパーツひとつひとつも、性格も…。
眞季は全てが、女の子みたいだった。


初めて眞季を見たとき、眞季は学校の裏庭で男の子たちに、いじめられていた。
私は女の子が男の子にいじめられているのかと思って、無我夢中で助けに行った。


眞季がいじめられている姿が、兄に遊ばれる自分と重なって、放っておけなかった。




どうやって眞季を助けたのかわからない。
それほど私は必死だった。
去って行く男の子たちを見て助けたんだ、と安心したのだけ覚えている。

そして、この日が眞季と私が仲良くなるきっかけになった。






眞季と私は、どこか似ていた。


学校で『女だ』とからかわれ、いじめられても黙って耐える眞季の姿は、兄に罵られ、玩具のように扱われても抵抗できない私自身に見えた。


眞季に兄と私の関係を、話す勇気はなかったけど、いつも何も言わずに傍にいてくれる眞季が、大好きだった。
何も話さなくても、私と同じように不本意な言葉を投げつけられて、人権を侵害されている眞季は、私の全てを理解してくれてる気がした。






眞季がいてくれると心強くて、 人と話すのが苦手だった私にも、友達をたくさん作ることができるようになっていって、いつしか学校という場所と眞季の存在が、兄からの逃げ場になっていた。

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