《MUMEI》 犯人「……知ってるって…なにを?」 陽菜は、なかなか言い出そうとしない。 「ねぇ、なにを知ってるの?」 「……小学校んとき…なくなったでしょ?」 「なにが?」 僕が聞くと、陽菜は睨んだ。 「あたしの物!あたしの物だけどんどんなくなってったでしょ!?覚えてないの!?」 小学校のとき、陽菜の物だけが盗まれる事件があった。 靴に上履き…。 それから体操服に水着、リコーダー …。 水泳の授業のときに、下着を盗まれて泣きながら帰ったりもしていた。 結局、犯人は見つからなかったけど……その犯人は… 「……アンタが…盗んだんでしょ?あたしの物…」 そう……、僕が盗んだ。 僕が陽菜の物を盗んだ。 でも、どうしてバレてるんだ? 「あたし…見たの……アンタが部屋で盗まれた筈のあたしの下着の匂い嗅ぎながらヘンなことしてるとこ…。凄く気持ち悪かったし、凄くショックだった。いちばん心配してくれてたと思ってた人が犯人で、あんなことに使ってたから…」 陽菜の目には、うっすらと涙が浮かんでいるように見えた。 「そんなことしてたのに…、アンタは次の日も平気な顔であたしに近付いて来た」 見られてたんだ……。 陽菜は全部、見てたの? 陽菜のパンツの匂い嗅ぎながら、陽菜の恥ずかしい部分を想像してオナニーしてるとこも……。 陽菜のリコーダー舐めたのも? 陽菜の水着着て、オナニーしてたのも? 陽菜の靴下咥えてたのも? 陽菜は全部見てた…? 「最初は許そうと思った、忘れようと思った…」 陽菜が苦しそうな表情で言った。 「違うんだよ!?そういうヘンなことするときだけ陽菜のこと考えてるわけじゃないんだ!毎日考えてる…。僕も陽菜と同じ気持ちだよ?」 「なに…言ってんの…?」 「僕たち、両想いだよ?もう…恐がることなんてないんだ…」 「ねぇ…アンタ、馬鹿じゃないの!?あたしはアンタのことが嫌いなの!毎日一緒にいてあんなことしてたのも苦しめる為、わかってる!?」 わかってる…わかってるよ、陽菜。 陽菜は恥ずかしいだけなん だ…。 本当は嬉しくて、仕様が無いんだよね…。 「毎日早くあたしの前から消えてって願ってた。だからもう、近寄らないで!あたしん家の周りうろつくのもやめて」 そう言って、部屋を出て行こうとする陽菜の腕を掴んだ。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |