《MUMEI》
葛藤
眞季と今まで通り、普通に話せる自信がなかった。



どんな顔で、眞季と話したらいい?

何を話したらいい?








それより…、眞季の目を見る自信がない。



学校なんか休んでしまいたかった。
でも、この家にいるなら、学校に行った方がマシ。




私は、のろのろと準備をして、外に出た。
いつもなら眞季を迎えに行くけど、その日は止めた。








──教室に入ったけど、眞季の姿は見当たらず、私はひと先ず安心した。


もしかしたら眞季は、いつもみたいに私が迎えに来るのを、待っているのかも知れない。


少し眞季に悪いことをした気分になった。



眞季のした行動は、許せない。


でも、悪いのは眞季だけ?

私に悪いとこはなかった?

眞季が、あんな行動をする原因を作ったのは、私にあった?





眞季は女の子みたいな外見だから、という理由でいじめられることを嫌がっていた。
眞季の傍にいて、いちばんわかっていたのに、私は女の子の遊びばかりさせてた。


眞季の優しさに、甘えてた。






本当は嫌だったの?

私も眞季を傷つけたの?

だから、あんなこと……



でも「大好き」って言ってた、あの言葉は何?








頭が混乱する。
どこで間違えてしまったのかわからない…。


授業なんか、頭に入らなかった。

眞季のことを考えて、自分に眞季を許すように言い聞かせる。
見なかったことにしようと頑張ってはみるものの、眞季のあの姿が…声が、頭から離れない。


けどそんな私の葛藤も、眞季が昼休みになって姿を現したことで、終わった。

「陽菜」

教室に入って、真っ直ぐ私の元に来た眞季は、いつもと変わらない笑顔で、そう言った。


返事をしなきゃ、とは思った。
でも、眞季の目を見れない。
見ようとするけど、あの姿が脳裏を過って、私の脈拍は上がって息も苦しくなって……、


耐えられなくなった私は、無言でその場から逃げた。

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