《MUMEI》 可能性「聞いて…高校が同じでも、もう今までみたいに一緒に行動できない」 翌日、私は眞季の家に行って、そう伝えた。 「…どうして?」 眞季は不安そうな顔で、聞いてきた。 「あたしたちは、もう子供じゃないの、わかるでしょ?」 眞季は自分の意見を言わないから、すぐに終わる話だと思った。 私の計画は実行しないで済むんじゃないか、なんて期待していた。 けど、私の予想は外れた。 「…やだよ」 小さな声だけど、眞季ははっきりそう言った。 「なんでも言うこと聞くから!何でもするから!だから…だから、一緒にいて!陽菜がいなきゃ…僕…」 泣きそうな顔で訴える眞季に、少し心が傷んだ気がした。 私がいなかったら、いじめられてしまう不安も、あるのかも知れない。 「…わかった、じゃあなんでもするなら今まで通り一緒にいる…でも言うこと聞かなかったら…」 「聞く!聞くよ、なんでもする!」 大人しい眞季が、こんなに自分の意見を言うのは初めてで、私は少し驚いた。 眞季に女の子の制服を着て、女の子のフリをして学校に通うように言った。 佐伯がしてたみたいに、女の子として扱おうと思った。 女の子と間違われるのを嫌ってた眞季だから、それだけでも充分、私を嫌う原因になると思った。 うまくいけば、そんな話だけでも私から、離れていくと思った。 でも眞季は、私から離れることなく今まで通り、一緒にいた。 兄と同じようにしなきゃ。 焦りを感じた私は、そればかり考えていた。 眞季の下半身を弄び、変態だと罵り、私から離れられる時間がないように接した。 眞季に自由な時間を、与えちゃいけない。 兄が私にしたように…。 けど眞季は、嫌がる素振りを見せなかった。 口では嫌がってるようなことを言ったけど、本当に嫌がってる表情は見せなかった。 どうしたらいいか悩んでるときに、彼女は現れた。 眞季と同じクラスの、佐野 結菜。 佐野さんは、眞季を気に入ったんだろう。 昔の私みたいに毎朝、眞季を迎えに行き、休み時間や帰りも眞季と一緒にいた。 兄も彼女ができてから、私から離れた。 眞季も佐野さんに恋愛感情を持てば、私から離れる筈。 そう思って私は、佐野さんと眞季が付き合うように強引ではあったが、いろいろ試してみた。 佐野さんは、私と違って眞季に優しく接する。 眞季はきっと、甘えられる場所が欲しいだけ。 だから、私以外に優しくしてくれる異性がいれば“陽菜がいなきゃ”とも思わなくなる。 そして二人をいじめる私に、嫌悪感や敵対心も抱いて離れていくかも知れない。 もしも眞季が佐野さんに、恋愛感情を抱けなかったとしても、 佐野さんが眞季に恋愛感情を抱いてくれれば、大丈夫だと思っていた。 その証拠に佐野さんは、眞季が男だと知ってから私に眞季のことを、事細かく聞いてきていた。 前へ |次へ |
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