《MUMEI》
初恋
佐野さんが、あの調子なら大丈夫。
佐野さんから離れられなければ、眞季は私を構う暇なんてない。


そう思って安心していた時に、私は“恋”というものを知った。


同じクラスの子に、部活とか面倒くさいしマネージャーにならないかと誘われ、私はバスケ部を覗きに行った。

「真鍋先輩!」

友達がそう呼ぶと、汗だくになって練習をしていた人たちの中から、真面目そうな人が走って来た。

「連れて来ましたよ、陽菜ちゃん」

友達がそう言った瞬間、彼の顔が真っ赤になった。
と、思ったら子供みたいな笑顔で、笑った。

「そういうこと言うなよ」

その笑顔を見た瞬間、自分の胸がキュウッとなった。
今まで感じたことのない感覚に、少し戸惑った。




眞季や兄の目が、怖くて見れないと思ったときとは違う感覚で、彼の目が見れなかった。

「陽菜、この人ね、真鍋先輩。あたしのお兄ちゃんの親友なんだけどさ、初めて陽菜見たときから紹介してくれってうるさくて」

「やめろって!」

二人は仲良そうにしていた。




紹介してくれって…?





「マネージャーやらない?ってのは口実でぇ、先輩と仲良くしてくれない?ってのが本音なんだけど」

友達の言葉に、どう答えていいかわからずに黙っていると、先輩が言った。

「ごめん、急に…びっくりするよな…。あ、そうだ!俺のアドレス教えとくからさ、気が向いたらメールしてよ」













──その日の夜、私は悩んでいた。
今まで悩むことは、たくさんあったけど、こんな気持ちで悩むのは初めてだった。


友達の話によると、先輩はモテるらしい。
成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗。
絵に描いたような人だ、とか言っていた。
でも決して軽いわけではなく、一途な人だから友達にだけでもなって欲しい、と。



私は初めて先輩を見た瞬間の自分の異変と、先輩の放つ不思議なオーラが気になっていた。

けど軽い女だと思われたくない。でも嫌がってるとも思われたくない。
友達に恥ずかしくてメールできなかった、とか思われるのも、なんだか恥ずかしい…。





私は迷った挙げ句、メールを送ってみた。

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