《MUMEI》
いつもと…
誰かの周りを調べるなんて、おかしな行動なのに、真剣な表情で調べたなんていう眞季が、異様に感じた。

「……調べたって…なに…?」

「危ないから…アイツ……陽菜のこと襲おうとしてるし、僕たちの関係も壊そうとしてるから…」

襲おうとしてる?
先輩が…?

眞季は何言ってるの?

それに“僕たちの関係”ってなに?
私と眞季は、ただの幼馴染み…今となっては、ただの腐れ縁でしょ?


私は眞季の言う“僕たちの関係”を否定し、先輩とは付き合ってることを伝えた。
付き合ってるから襲われるなんていうことはない、と。

「付き合ってる……?」

眞季の顔から、表情がなくなったように見えた。

「そう、だからもう余計な心配してくれなくていいの、わかったら放して!」

眞季の表情が、だんだん暗くなっていっている気がした。

「陽菜は…僕を裏切ったの?浮気してたの?」

「浮気!?なんで浮気なんて考え方できんの?アンタ浮気の意味わかってる?……もういいから放して!放さなきゃ痛い目にあうから!」

そう怒鳴る私に、眞季は微笑んだ。

「……痛い目?…それは僕の台詞だよ…陽菜はわかってるでしょ?もう、昔の僕とは違うって…僕の手だって昔だったら振り解けたもんね…」

「だから……なに?」

普通に言ったつもりだったのに、私の声は震えていた。



眞季ができるわけない。
昔から眞季は、怖がりだった。
そんな眞季が、痛い目なんかに遭わせられるわけない。

大丈夫。そう自分に言い聞かせる私に、眞季は私が油断していただけだと言った。
自分は男だと主張した。


そして眞季は、私の腕を掴む手に力を入れ、僕には勝てないよ、と言った。










認めたくなかった…。



私が眞季に勝てないなんて…。


眞季はいつも、私の後ろをついて歩いてた。
眞季は怖がりで、泣き虫で、私がいないと何もできなくて…



私は眞季に、平手打ちしようとした。
眞季は平手打ちされると、いつも「ごめん」と言っていたから。

なのに眞季は、私の手が顔に当たる前に、私の腕を掴んで微笑んだ。

「ね?力じゃ勝てないよ…陽菜の細い体じゃ僕には絶対勝てないよ」

「身長だってあたしと変わらないくせに」

その言葉は今できる精一杯の抵抗だった。

話し方や声のトーン、表情や力の加減…。
その全てが、いつもと違う眞季に私は混乱した。
そんな私の心境を見透かしているのか、“勝てない”という言葉通りに眞季が抱きついて、私は更にパニックになって叫んだ。

「陽菜は変わってないね…背は伸びたけど、細いのは昔から…。顔だって…まだ子供みたい。胸はおっきくなったの?」

暴れる私に静かな声で言うと眞季は、私の胸を掴んだ。

「いやぁぁあぁあッッ!!!! 触んなァァ!!!!!!」

「いつも陽菜の体想像してた…あのDVD覚えてる?」

DVD?

「女の子が虐められてるやつ…あれ見ながらさ、 陽菜が虐められて泣いてるとこ想像してた……」

覚えてる……。


眞季の部屋に置いてあったDVD。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫