《MUMEI》

「どうして俺に関わるんだ?憎いんだろ、殺してしまいたい程に。

近付いたと思えば離れてしまう。斎藤の心の中が読めない……いや、そもそも心なんて不確かなものに縋ってしまう時点で間違っているのか。

若菜にも考えがあって、やっていることなら俺は侵せない。けれど、確かめることは出来る。

その為の口だ。」
樹はアラタに伝えるため言葉を選んだ。




「独り言筒抜けだな。まあ、考えるということが出来るだけよしとしよう。

お前は俺の犬だから、賢くなるように躾する、ああ、最近は憎くないよお前。


殺す理由に愛とか憎しみとか探すことって死に対して不誠実って思わない?

決めたんだ。俺はね、俺の為にしか殺さないって。
お前は殺したい理想像だから、 殺したい でも、それに対するリスクが割に合わないから殺さない。」
アラタは口角を上げた。歯がたまに覗く、ただそれだけで樹の心音は高鳴る。





「斎藤って…………純粋。」


「―――――余計な口利くようなら縫い付けるけど」
先程と変わらず、口元を上げたままアラタは言った。

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