《MUMEI》
可能性
「え、あ!ごめん。ちょっと不思議に思っただけで」
二人の視線に気付いたユキナは、申し訳なさそうに頭を掻いた。

「……兄ちゃん、由井さんって?」
「あ?ああ。俺の友達でさ。このプロジェクトと戦う集団のリーダーだった奴だよ。これ、その集団の非常用コインロッカーに入ってたんだ」
「だったって、死んだの?」
「……ああ」
「そんな集団があったんだね。知らなかった」
「まだ、他にも同じような活動してる奴らがいるかもしれないけどな」
三人の間に沈黙が降りてきた。

 突然吹いた強い風が、紙を飛ばしそうになり、三人は慌ててそれを押さえた。

「けど、確かになんでその由井さんが、これの解除コード知ってたんだろう?数字は裏表にびっしり書かれてる。ざっと見ても二百人分?」
サトシが代表して紙を手に持ち、上から順に数字を追っていく。
「さあ。けど、あいつらはプロジェクト相手にしてたんだぜ?今までのプロジェクト内容からこういう事態を予測しててもおかしくない。きっと、前のプロジェクトでも同じことがあったんだよ。で、関係者を買収したか、脅したかして、このコードを手に入れた。あいつらならどんな手でも使うだろ?」
「まあ、そうかもしれないけど。でも、その場合、これが本物かどうか怪しくない?その関係者が嘘の情報流したかもしれないし」
「そうだとしても、どうしようもないだろ。他にこれを取り外す手があるか?まさか、ずっと付けたままってわけにもいかないだろ。なあ?」
ユウゴはサトシを見た。
サトシは何度も頷いている。
そして安心させるように笑みを浮かべた。
「大丈夫。コードは自分で入れるから。兄ちゃんたちは避難しててよ」
「でも…」
「どっちにしても死ぬかもしれないんだ。もしかすると、遠隔操作で起爆のスイッチが入るかもしれない。外せる可能性があるのなら、やらないよりやった方がいい」
「……わかった」
ユキナも決意したように頷いた。

「で、番号はあったか?」
 二人の会話に決着がついたタイミングを見計らって、ユウゴは聞いた。
「えっと、ちょっと待って。僕の番号が三一六だから……」
紙を見るサトシの瞳が上から下へと移動する。
「あった!」
 サトシが嬉しそうにユウゴを見たその時、ビルの下から「いたか?」という男の声が響いてきた。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫