《MUMEI》
ひまわり
『俺を感じろ…』
ステージに立った瞬間、強い波動を感じた。

何、これ…。

今までのセッションにはない強い波動だ。
大抵、ピアニストは歌手が上手く歌いだせるような神経の使い方をする。イントロなどは特に『はい、どうぞ』といった感じの、歌伴なら任せてタイプであったり、または『このイントロならいいでしょう?』とか『ちょっと難しいことやっちゃったけど、これで何とか入って!』などの懇願するタイプとか。
色々な人達がいた。私もそれに答えて『よっしゃー、いっちょやってやるで!』な感じで歌いだしたりしたものだ。
ところが、今回はその中のどれでもなかった。

『この波動は何?君はどれだけ私を受けとめることができるの…か』

瞬間、意識の中で問いかけてみた。そしたら、また返された、

『いいから、俺を感じろ…!』

わかった。覚悟はできた。
傷口が開こうが、内臓がえぐりだされようが、こいつの自信にかける。
そして、ひまわりを歌いだした。彼のピアノは何の不安もなくどこかへ飛んでいきそうな私を上手く受け止め、一音一音に答えてた。
音楽的に言えばそのピアノは歌に食い付き、時に寄り添い、時に私を解放した。君ならいい。傷口が疼くこうが。私を引きずりだして。

私の昔の傷あとなど彼の目には入らない。
彼が望むすべてのものが私の心をえぐりとろうとしている。引きずりだされた内臓は淡い光を発しその光は
やがてゴールドの輝きとなった。その輝きはまるでひまわりの畑のよう。
ソフィアローレンさながらにたたずみ、私は古傷の痛みをこらえ、歌う。
しかし、その瞬間何かが生まれる。光の微粒子が傷口に注ぎ込まれ私は再生される。
そして、彼は最後までしっかり私を離さなかった。

したがって、私はその広大なひまわり畑という宇宙の中でさまよわずに歌い切ることができた。

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