《MUMEI》

「ねぇあなた。
片付かないからさっさと食べちゃってよ。」



「ん〜、もうちょい。」



「もうッ…聞いてないんだから…」
















………………………………



   聖龍高校監督
   辰沢 一志宅



………………………………







(…面白い。)



ゴクゴクッ…



(秀皇相手に対して奇策の連発。


しかもそれぞれがちゃんと意味を持って最終的な作戦に繋がってる。


マグレ…じゃね〜よな。


こんな出来過ぎた偶然あるわけねぇ。)



「ちょっとあなた!!」



「悪い悪い。今どく。」



一志は飲みかけのビールを手に取りテレビの前に座り込む。



(確か赤高の頭脳はコーチのこいつ。


前に試合したのは3月…だったな。


あの時は大差で勝ったが何かしらの奇策をぶつけて来ることはほとんどなかった。


いや…あの時はこいつの頭ん中にある作戦を実現するだけの実力が選手たちになかったのか…)



ゴクゴクッ…



「ふ〜っ…」



(あれからまだ数ヶ月…


よほど鍛えてきたと見える。


自分の戦略を実現する為に…か。


ここまで戦略練れりゃ資質は十分だわな。


こりゃ予想外に苦戦を強いられそうだな。)



「これ…明日の対戦相手?」



「ん、あぁ。」



「強いの。」



「そりゃ弱いチームが決勝には出てこないさ。」



「ふ〜ん…」



(こいつは相変わらず無関心…と。)



〜♪



「携帯鳴ってるわよ。」



「ん〜。」



(ったく良いとこなのに誰だよ…)



【着信:阿久津栄二】



(…阿久津?)

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