《MUMEI》 手紙僕は愚かにも25秒という間、貴方のキスに気付かなかったのです。僕はそのことをとても悔しく思いました。同時に自分の愚直さを思い知ることに成りました。ここでせめてもの救いに、あのとき自分が何を思っていたのかを言えたのなら良かったのでしょうけど、それも思い出すことが出来ません。我ながら考えることですが、貴方だって悔しかった筈です。僕はきっとあまりに反応を示さなかったのですから……。 ただ、これだけは聞いて下さい。僕はあの日、何か幸せだったことに気付いているのです。何と云いましょうか、貴方と過ごしたことは覚えてなくとも、誰かのそばに居て、あるいは誰かが僕のそばに居て、安心感やぬくぬくとした――春の野原で温かい日差しを受けているような――気持ちで居たのは間違いありません。 |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |