《MUMEI》
神が決めた出逢い。
『人殺しっ!!お前なんか、いなければ二人はっ、死なずに済んだのにっ!!』

人は、誰だって一度は罪を犯す。

ただ、その罪が、重いか軽いか、許されるものかは、人それぞれ 。

『あいつは、悪魔の子だ!不幸を呼ぶ、どこかへ閉じ込めとかな
ければ!!』

決して許されぬ罪を犯したものは、永遠と苦しまなければ、いけない。

『ごめんなさい…ごめんなさい…。お母さん、赤ちゃん…。』






*************






〜はるか北の国、ラシュハルト国・バミュールルの町、
小さな教会・バラッセント教会にて〜



―ゴーンゴーン。







「あぁ、神よ罪深き子羊を許したまえ。」

そこに、重い罪を抱えた小さな16歳の少女がいた。
その少女の名は、ミシェル・アクレット。
見た目は、髪が短く綺麗な金髪だが、きりっとした目付きと少年ぽい、口調のため少年と間違えられる事が多い。
だが、この町で少女のことを知らぬ者は、おそらくいない。
そのくらい、有名な少女だった。

…………。

“悪魔の子”として。

「……掃除しなきゃな。…あ、洗剤切れたんだ。買ってこないと。」







*************







同じく、バミュールルの町・市場にて〜


「マイ、これ頼むね。いつも通りで。」

「はい、マランおばさん、任せてください。」

「じゃあ、気をつけてね。」

そう、優しそうに笑い言った、五十過ぎのマランおばさんは、マイがいなくなると別人のように顔つきが変わった。

「ふん、馴れ馴れしく私の名前呼びやがって。
罪人のくせに。」

マイ・ユマニ。
優しい顔をした、13歳の少女。

「マランおばさん…いつ私のこと…捨てるのかな。」

マイは、今まで奴隷として使われていた。
そして、主は要らなくなるとマイを捨てたり、売ったりしていた。
“人”として、生きることを決して許されなかった。
いつ、捨てられるか分からない恐怖。希望のない未来。
そんな中、マイは生きていた。

「神様…私は、生まれてきた意味があるのでしょうか?」

物心ついたときから、人の優しさを信じられなかった。
初めて、主に裏切られ、物として売られたあの日。
“人は、簡単に人を騙して裏切る”と、教えられた。
それから、ずっと心を殺して、優しさに騙されぬよう、と。
なぜ、自分は生まれてきたのだろう。
奴隷として使われるため?
なぜ、自分は人として生きてはいけないのだろう。
お金がないから?家がないから?
なぜ…みんな、同じ人間なのに、自分だけ、こんな扱いをされているのだろう。
ねぇ、神様教えて下さい。
なぜ、ですか?

「私が、あの時した行動は、してはいけないことだったのですか?そんな…ダメなことだったのですか?」

私は、ただ…人として生きたかっただけなのに……。
あれは、重罪だったのですか……?










************






「ごめんな、売り切れたんだ。」

「…そう。……どこかで、洗剤売ってないか?」

「さ、さぁ?わ、わからないなぁ。あは、あははっ。」

………これで、なん回目だろうか?
売り切れと言われたのは。
まぁ、いつものことだから、慣れているのだが。

「…これじゃあ、掃除ができないな…。」

みんな、この町の人たちは、私を見るとひそひそ話をしたり、避ける。
私が…罪人だから、だろう。
だけど、それでも…こうして、生きれているとに私は、感謝しなければならないのだ。

「うわっ、悪魔だっ!!逃げろー!!!呪われるぞっ。」

そう言って前に歩いていた少年は仲間と一緒に、私から逃げていった。
…………。
“呪われる”か……。
まぁ、別に気にしないけどな。
そう、思っていると、突然私は誰かに話し掛けられた。

「あの子達、失礼な子ね!!
まったく、親の顔を見てみたいわっ!!
貴女も、なんか言い返せばいいのに。」

一瞬、びっくりした。
だって、私は罪人で、今まで人に話し掛けられたことなんて、なかったから――。







*************



――数時間前。

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