《MUMEI》
男たち
三人は同時に動きを止めた。
 ユウゴはジェスチャーで二人に動かないよう指示すると、自分はビルの下の様子を窺うために、落下防止フェンスまで移動した。

このビルは五階建て。
下の様子はよく見える。
しかし逆に言えば、下からも屋上が見えるのだ。

ユウゴはフェンスに当たらないよう気をつけながら下の様子を覗き見た。

 通りでは、数人の男たちが手に持った何かを見ながらウロウロしている。
「絶対、ここらだって」
その内の一人が隣に立つ男に言った。
「わかってるよ。だから、ここらのどこだって言ってんだよ!」
隣の男は苛立った様子で声を荒げる。

「ったくよ。どうせ作るんなら、もっと正確に位置が表示できるやつ作ればいいのに。妙なところで手を抜いてるよな」
「まったくだ。しかし、早いとこ始末しないと不合格になっちまうぜ?」
「ああ、そうだな」
そう言って、男たちはキョロキョロと周りを見始めた。
「通りにいないってことは、建物の中だ。手分けして探そう」
一人の男の提案に他の男たちは頷き、バラバラに散って行った。

 ユウゴは慌てて二人の元へ戻る。
「なんなの?」
「わかんねえけど、多分、サトシを探してるっぽい」
「僕?」
「ああ、きっとそれ、発信機にもなってんだよ。あいつら、手に持った何かを見ながら探してたから」
声を最小限に落として会話を続ける。
いつ、ここに奴らの一人が来てもおかしくない状況だ。

「番号あったんだろ?さっさと外しちまえ」
「う、うん」
サトシは慌ててコードを確認し、右足首に手を延ばす。

「いたぞ!!」

振り向くと、ドアの窓に目を見開いた男の顔が見えた。

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