《MUMEI》

病院の待合室で七生を待つ。そんなに時間はかからないはずだ。

「ただいまー……」


「お帰り。珈琲飲む?」
自販機で買ってみたもののくどすぎて飲み切れなかった。


「……ん。」
俺から受け取った缶を一気して瓶、缶のごみ箱へ捨てた。



帰る途中に学校の近くを通り過ぎる。グラウンドでボールを打つ音が鳴る。


……気まずい。


「二郎は野球やってた俺と朗読やってる俺、どっちがかっこいい?」
最近の七生は変だ。


「決められないよ。一生懸命な七生がかっこいいかな。だから両方。

でも今の方がかっこいいかも。」
変だと思いつつちゃんと答える。野球一筋の時より頑張っているのは確かだ。この数カ月で少しは成長した。例えば夏休みの宿題をやってきたとか、小テストで平均点取ったとか。

七生が自転車の勢いを増して追い越す。


「……なんで俺のことそんなに分かるの?」
今度は俺が七生を後ろから追い越す。


「そりゃあ、ずっと見てるから」

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